このテーマで文庫本649ページとは。。

源氏鶏太「時計台の文字盤」(新潮文庫)を読んだ。



単行本は1975年の出版。文章のテンポなどから考えると、新聞か週刊誌の連載小説だったと思われるが、解説などにはその説明はない。

テーマは「結婚前の女性は処女であるべきかどうか」。
時代を感じさせる内容だ。

読みながら感じたのは、約40年前と今の人々の意識の変化。
時代は大きく変わったんだなあと感慨深いものがある。

ちなみに同年のベストセラーは有吉佐和子「複合汚染」、司馬遼太郎「播磨灘物語」など。
セックスとドラッグに溺れる若者たちを描いた村上龍「限りなく透明に近いブルー」が出たのはこの翌年。
4年後には村上春樹が「風の歌を聴け」でデビューしている。

「時計台の文字盤」は、近現代日本文学の分水嶺に〝たまたま〟位置した作品の一つだ。あくまでも〝たまたま〟だが、二人の村上と、同時代に書かれたとは思えないテイストを受け入れられるかどうかは、その人の感性次第。

もちろんこれは、作家の年齢の差にもよるだろうが、同じ時代に生きていても、感得する時代のテーマや雰囲気は人により大きく違うという好例だなあとも思った。

描かれている対象となる若者たちはいずれも同時代に存在していたはず。一方で現代につながるライフスタイルを実現していた若者がいて、一方には高度成長期を支えた世代と地続きの若者がいた。同じ時代の中にグラデーションのように、さまざまな層が存在しているということになる。

だがそのグラデーションは、徐々に一方の色合いが強くなっていき、10年、20年のスパンで見ると、旧世代の色合いは急速に古びて見えてしまうということなんだろう。

もともと1970年代ごろまでの日本映画が好きな自分としては、描かれている時代の雰囲気が実に好ましく、楽しく読了。
このタイプの作家。やはり好みであることを再確認した。





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7月25日に買った本


7月25日にブックオフで購入した本


小宮一慶「『1秒!』で財務諸表を読む方法 仕事に使える会計知識が身につく本」



池上彰「わかりやすく「伝える」技術 」 講談社現代新書


安田 浩一「ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて」講談社



「ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する 」(ランダムハウス講談社)




長岡 義幸「マンガはなぜ規制されるのか 「有害」をめぐる半世紀の攻防 」(平凡社新書)



「宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎」 (幻冬舎新書)



村山 吉広「中国の知嚢(上) 」(中公文庫)




平松洋子「野蛮な読書」 (集英社文庫)


朝日新聞取材班「非情世界   恐るべき情報戦争の裏側」(朝日新聞出版)


中島梓「夢見る頃を過ぎても 中島梓の文芸時評 」(ちくま文庫)

いやしかし、見事なまでに関連性の感じられない並び。

さて、何から読もうかな

5月21日、に買った本

 驚いたことに、買った本のカテゴリーを書くのは2年ぶり!
 2013年に畑違いの部署に異動になり、その年に父が入院、その父が2014年に亡くなり、2015年には母が倒れて救急車で運ばれたり…。
 ストレスがたまると、無性に本を買い込むのが習慣になっていて、本は今まで以上に買い込んでいたような気がする。
でもそれをアウトプットする余裕はなかった。
 最近、久々に週に2冊のペースで本を読むようになった。読んだ本のことも少しずつ書いているが、買った本のことも、書かねばと思った次第。

 まずは21日に買った本が3冊。



堂場瞬一「破弾」 (中公文庫)
刑事・鳴沢了シリーズの2作目?
少し読み始めたが、これは1作を読まないと面白くないかなと感じたので、読むのを中断。


佐藤優「国家と神とマルクス 「自由主義的保守主義者」かく語りき 」(角川文庫)


村岡理恵「アンのゆりかご―村岡花子の生涯 」(新潮文庫)


24日は子供にお願いされた雑誌を買いながら、刑事・鳴沢了シリーズ1作目を探しに。
ありました。

堂場瞬一「雪虫 」(中公文庫)

もう一冊は絵がキレイだったので。

「天文学入門―カラー版」 (岩波ジュニア新書 (512))

最近読んだコミック「宇宙兄弟」にちょっと引きずられているかも。。

今夜さっそく「雪虫」を読み始めます。

暗い情念。不安な空。たどりやすくない文章のスリル

古井由基地の短編集「椋鳥」を詠んだ。
いわゆる一つの純文学。久々にこんな文体の小説を読むと、どんな感想を書いていいのかわからない。
とにかく空が不安な表情であった。
そして男女の関係が粘っこく、蒼く暗いイメージを持っていた。

同時に感じたのは約束事ではない、たどりやすくない日本語の文章の何とスリリングなことかということ。
久しく忘れていた、先の読めない文章の流れの面白み。
エンターテイメント小説のように先を促すよどみない文章ではなく、むしろ読み進むのを引き留めるような、読み手の意識を躓かせる表現。

詩を読んでいるような飛躍、読みながら次々と湧き上がってくる連想や言葉同士の連関が、ストーリーを追うことではなく、「読む」ことそのものを味わえる。そんな経験を久々に味わった。

しかし客観的に考えると、この種の小説は、きっともう時代には求められず、読まれなくなるんだろうなあと感じた。
個人的には好きだけれど。

テーマ : 読んだ本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

高度成長期の働く人々の姿 源氏鶏太「春雨酒場」

昭和。

中でも日本という国がとてつもないスピードで発展を続けていた高度成長期に一世を風靡した流行作家の一人に源氏鶏太(1912-1985)がいる。

今回読んだ「春雨酒場 」 (角川文庫)は初版から5年後に出た第三版だが、そのカバーの裏側の袖には、48冊の著書がずらりと並んでいる。森重久弥が社長役を務め、1960年代に大ヒットした「社長シリーズ」の原作者でもある。

残念なのは流行作家の常として、死後、急速に忘れ去られてしまったこと。現在、その著書のほとんどは絶版か品切れになっていて、20年ほど前までは、よく古書店でも見かけたが、最近は古書店ですら見なくなってしまった。

本書には1957(昭和32)年から1963(昭和38)年に書かれた「春雨酒場」「殴られた男」「正々堂々」「大財閥」「共存共栄」「ある転勤」の6つの短編を収録。

場末の酒屋とバー(これって今風のオサレなバーではない。ホステスのいるバーのこと。この使い方は今は通用しないかも)男女の決してスマートではない恋愛模様を描いた表題作は、1960年代の日本映画を見ているような、とても視覚的な作品。
工場での女工(女性労働者のことです)たちのストの顛末を描いた「共存共栄」も、自己主張を始めた若い女性たちが、当時の源次ら戦前世代にとっていかに新鮮な存在だったかが伝わる。

「ある転勤」はサラリーマン社会の競争の冷やかな側面を描いた佳作。読みながら、島耕作シリーズを連想してしまった。

ものすごく面白い。というのは、ちょっとはばかられるけど、世の中がまだがつがつと成長し続けていた、その時代を映す作品として楽しく読めた。万人にはお勧めしないが、1970年頃までの日本映画が好きな人は、きっと楽しめる。そんな作品集です。
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Author:too much books
とにかく本が多すぎる。でも買うのも読むのもやめられない。どこまで買ったり読んだりできるのか。行けるとこまで行ってみます。

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