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Author:安波茶40’s(改安波茶30's)
40際になりました。30’s改め、「安波茶40’s」。「あはちゃ」と読みます。沖縄県浦添市にある集落の名前です。読書の時間が激減したのが悩みの種。のんびり更新中です。

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贈り物に

絵本作家のエッセイ

絵本作家あまんきみこの「空の絵本」を読んだ。

空の絵本 (ことばのおくりもの)空の絵本 (ことばのおくりもの)
(2008/03)
あまん きみこ

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 「車のいろは空のいろ」という絵本が代表作の著者の、意外にもこれがはじめてのエッセイ。

 病弱だった著者が、病気で寝ているときに窓から見えるそらに慰められたと振り返るのが「空の絵本」。
 エッセイのそこかしこに顔を出す、著者の母親の姿が、不思議と心に残る。きっとこの人は、母親の暖かな愛情に包まれて、こんな美しく優しい話を創作できる感性を育てたんだなあと思う。

 母がなくなる前後をつづった「思いだすままに」などで、亡くなった母への著者の思いが見て取れる。
 
 柔らかなタッチの松成真理子のイラストも心休まる一冊です。

【あまんきみこの本】


【松成真理子】
 

高村智恵子

 高村光太郎の「智恵子抄」は、自分が生まれて初めて買った詩集だ。確か、ポプラ社の小豆色のハードカバーの「日本文学全集」か何かのシリーズだった。
 その「智恵子抄」を知ったのは生源寺美子(しょうげんじ・はるこ)「もうひとりのぼく」という児童文学の中でだ。
 まったく性格の違う双子の少年が、中学に入学して変化していくさまを描いた作品。
 その小説の中で、双子の少年があこがれる同級生の少女が読んでいるのが、「智恵子抄」だった。
 ロマンチックな恋愛詩。その奥に、愛する妻が狂気にとらわれて自分を失っていく悲しみや絶望が隠されていることなど、まったく知らなかった。
 
 中学生にとって、さすがに「智恵子抄」のハードルは高かった。結局、高校に入ってもろくに読まないまま。きっちりと読んだのは大学に入ってからのことだ。
 
 最近、古本屋で2冊の文庫本と出会った。
 講談社文庫の「智恵子から光太郎へ」(1979年)と現代教養文庫(社会思想社)の「紙絵と詩 智恵子抄」(1965年)。
 智恵子が絵を志していたことは知っていたが、精神を病んで後に、紙絵の制作を手がけていたこと、恥ずかしながら、まったく知らなかった。そもそも、光太郎と智恵子の伝記的事実を何も知らなかった。
 
 前者は光太郎の詩と、智恵子の紙絵を前半に配し、後半は作家の津村節子の「智恵子から光太郎へ」という文章を収めている。文章の初出は雑誌「太陽」の1975年5月号の文章への加筆・修正。


book001.jpg

 文学者の夫(吉村昭)を持つ女性の視点で、光太郎と智恵子の関係を読み解くエッセイ。智恵子が自分の世界に閉じこもっていったことを、「智恵子抄」末尾の「うた六首」を引いて、津村はこう書く。

 光太郎智恵子はたぐひなき
  夢をきづきてむかし此処に住みにき
                       「うた六首」

 たぐいなき夢を築いたのは光太郎一人であった。光太郎が高揚すればするほど、智恵子は背伸びして緊張し、コンプレックスに陥って自己嫌悪し、光太郎の築いた夢に橋を架けることが出来ずに孤独に閉じ籠もっていった。     (p86)


 だからなのだろうか。背伸びをする必要のない、狂気の中で作られた紙絵は、実にのびのびとしていて、智恵子が持っていた高い才能を感じさせる。

book002.jpg

 
 こうした作品を、智恵子は下書きもせずに、爪を切る小さなはさみで作ったというから、驚きだ。

 もう一つの文庫本は、「智恵子抄」の全作品に、智恵子の紙絵をイラストのように使ったもの。
 中はこんな感じ。

無題


 こちらは光太郎の「智恵子の半生」など智恵子について彼が書いた短文も集められている。ほかに伊藤信吉が鑑賞の手引きとして「生涯の愛の歌」という解説文を書いており、光太郎の年譜も付いている。


 
 

タイの少女の日常

「シルクの花」を読んだ。

シルクの花 (鈴木出版の海外児童文学 この地球を生きる子どもたち)シルクの花 (鈴木出版の海外児童文学 この地球を生きる子どもたち)
(2008/03)
キャロリン・マースデン

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 タイの農村にくらす、11歳の少女ノイの物語。
 地主が農地を不動産業者に売ったために、畑を失ったノイの父。
 一家はレンガ積みの仕事を得ている父と、蚊帳を作る内職をしている母、そしてシルクのかさに見事な絵を書く祖母の働きで生計を立てている。
 祖母の手伝いで、絵を描くことが大好きなノイは、いつか自分も祖母のように絵を書くことを仕事にしたいと思っている。
 だが、小学校を卒業して4年間家にいた姉は、家計を助けるため町にあるラジオ工場ではたらくことに。室内で、ひたすら小さな部品に取り組む姉の姿を見たノイは思い悩む。
 「私も小学校を出たら、あんな仕事をしなくてはならないの?」

 思春期を前にした、多感な少女の感情のゆれが、みずみずしく描かれた作品。
 働かなくても生きていける。そんな私たちの暮らしを振り返って、無性に恥ずかしくなってしまった。

 
 

かんべむさし「むさし日曜笑図鑑」

かんべむさし「むさし日曜笑図鑑 」(新潮文庫)を読んだ。

むさし日曜笑図鑑


 80年代、SFがまだエンターテイメント小説のメインストリームに出ていない頃、この人や横田順弥のナンセンスSFをよく読んだ。ちょっとした着想を、SFらしい大胆な飛躍で読みものにする作品群。
 この著差の作品では「笑い宇宙の旅芸人」というのが、「SFアドベンチャー」に連載されていた。「この話、いったいどこへいくのか?」と首をかしげながら読んでいたなあ。中学生にはちと、難しかったのかも。

 先日読んだこのエッセイは大阪弁丸出しの地域性あふれる内容。1983年5月から1985年4月まで「大阪新聞」に連載したもの。
 ワープロを買って原稿を書く話が、面白おかしく書かれていて、時代を感じながら読了。
 地元大阪の話もたくさん出てくる。大阪の人が読むと、もっと楽しいんでしょうねえ。

 山下洋輔の解説も秀逸。

 同書は現在絶版。著者の本はほとんど絶版のようです。でも古本屋では良く見かけます。

 

翻訳小説の誘惑

青山南「気になる言葉、気が散る日々」を読んだ。
気になる言葉、気が散る日々気になる言葉、気が散る日々
(1998/08)
青山 南

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「本の雑誌」を定期購読していた大学時代に、この人の書いた「本屋を丸ごと買う」というエッセイが面白かった。で、この人の書いたエッセイをよく読むようになった。

 図書館で、久々に名前を見たので借りてみました。

 面白い。何より、社会人になって、すっかり疎遠になっている海外の翻訳小説についての話がいろいろ出てくるのがいい。どれもこれも、この人が紹介すると、読みたくなるんだよねえ。

 文体とか、話の運び方には、どことなく植草甚一の面影(文影?)が。

 「ギャツビーの涙の岬」には、「グレート・ギャツビー」を書いたフィッツジェラルド宮沢賢治が同年生だという記述が! うーん、すごいギャップのある同級生だ。

 ちなみに、「ジャズ・エイジ」を生きたフィッツジェラルドに対し、宮沢には「『ジャズ』夏のはなしです」を1926年に書いているという。ちなみに「グレート・ギャツビー」は1925年。宮沢のジャズの話、読んでみたいですねえ。

 あと、ジャニス・ジョプリンの名盤「チープ・スリル」のジャケットを描いたロバート・クラムを追ったドキュメンタリー映画「クラム」の話も面白い。
 参考までに「チープ・スリル」はこんなアルバム。

チープ・スリルチープ・スリル
(2004/08/04)
ジャニス・ジョプリン

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 クラムの絵はこんな感じ。

ロバート・クラムBEST―Robert Crumb’s troubles with womenロバート・クラムBEST―Robert Crumb’s troubles with women
(2002/07)
ロバート・クラム柳下 毅一郎

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American SplendorAmerican Splendor
(2005/04/22)
Harvey PekarRobert Crumb

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R. Crumb Draws the BluesR. Crumb Draws the Blues
(1993/08)
Robert Crumb

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 あの濃密で、アンダーグラウンドな画風の背景を示唆するようなエッセイ。ちなみにクラムは、ジャニスのレコードジャケットの原画が返却されず、サザビーズのオークションで天文学的数字で取引されたのを聞いて「あいつらは泥棒だ」と言っているらしい。うん、なんとも70年代チックな話です。


【青山南 エッセイ&翻訳】