買った本と読んだ本の備忘録。ジャンルは雑多。詩と小説。文学一般。性科学。歴史などなど。
何を探しますか?
プロフィール
Author:安波茶40’s(改安波茶30's)
最近のコメント
最近のトラックバック
カテゴリー
検索フォーム
PR
ブログ内検索
贈り物に
フリーエリア
|
「シルクの花」を読んだ。
タイの農村にくらす、11歳の少女ノイの物語。 地主が農地を不動産業者に売ったために、畑を失ったノイの父。 一家はレンガ積みの仕事を得ている父と、蚊帳を作る内職をしている母、そしてシルクのかさに見事な絵を書く祖母の働きで生計を立てている。 祖母の手伝いで、絵を描くことが大好きなノイは、いつか自分も祖母のように絵を書くことを仕事にしたいと思っている。 だが、小学校を卒業して4年間家にいた姉は、家計を助けるため町にあるラジオ工場ではたらくことに。室内で、ひたすら小さな部品に取り組む姉の姿を見たノイは思い悩む。 「私も小学校を出たら、あんな仕事をしなくてはならないの?」 思春期を前にした、多感な少女の感情のゆれが、みずみずしく描かれた作品。 働かなくても生きていける。そんな私たちの暮らしを振り返って、無性に恥ずかしくなってしまった。
文学する財界人としてしられる堤清二。
その詩人、作家としての名前は辻井喬。 今回読んだのは辻井の「書庫の母」という短編集。
死んだ友人、死んだ妹を思い返しながら、自身の青春時代を振り返る「落葉」。転居のため書庫を整理しながら、母の別の姿を見つける「書庫の母」。パリで死んだ妹の行き方を鏡にして、日本に生きる自分を映し出す「いもうと探し」。実業家として成功した父と、弟への思いをつづる「襲い詫状」。歌人として死刑囚と交流する母の心の軌跡を追う「死刑囚と母」。年老いた女流評論家の日常を淡々と描く「余生」。 各作品のどこかに、経営者と文学者の二足のわらじをはいた作者の姿が投影されていて、非常に興味深く読めた。 いずれも「家族」「死」「老い」が通奏低音のように流れている。けれど陰鬱な印象はない。どこか浮世離れしている感じがある。 家族に対しても、べったりの愛情という描き方はない。静かに、しっかりと相手の姿をつかもうという思いが伝わってくる。そんな短編集だった。 美しい装画は今井俊満の「The Flow of waters」。 時の流れを思わせる画だ。 【辻井喬の本】 【堤清二について】
絲山 秋子「逃亡くそたわけ」を読んだ。
タイトルに引かれて読んだ。期待を裏切らない出来の小説。 躁病の女子大生(福岡県出身)と欝の会社員(名古屋出身)が、福岡の精神病院の入院棟から逃げ出し、九州を縦断しながら、ときおり観光も楽しみ、鹿児島県指宿にいたる。 その行程のてんやわんやを描いたロードノベル。なのです。 女子大生の福岡弁のスピード感が、まさに「逃亡」のもつ切迫感、ドライブ感を伝えていて、実に楽しく、面白く読み終えました。 本当はシリアスなはずの、メンタルの病を、ここまでロマンチックを排除して書いていることに感嘆。 前に読んだ「ダーティーワーク」もそうだったけど、いい作家ですな。 【「逃亡」というキーワードで本を集めてみました】
石坂洋次郎の「あいつと私」を読んだ。
この徳間文庫版の表紙でも分かるように、石原裕次郎 ちなみに、私が持っている新潮文庫版の表紙はこんな絵。 昭和っぽくて、私は、こっちが好きです。画家は沢田重隆。 ![]() 高名な美容師の息子で、出生の秘密を抱える黒川三郎と、健康で家庭的な環境に育った浅田けい子の恋を軸に、若い大学生たちの青春と性を描いた小説。背景に日米安保 主人公のけい子のモノローグの形式をとった文体のせいか、非常に読みやすい。まだ戦争の記憶が残る時代。明るく、自由を謳歌する大学生たちの姿には、解き放たれ、再出発した日本という国の青春の姿が反映されている。 映画も以前に衛星放送で見たことがあるが、実にさわやかな作品だった。裕次郎もさることながら、けい子役の芦原いづみ 明るい未来が輝いていた。戦後の日本。ノスタルジーに浸るのではなく、閉塞感の漂う現代との比較で見るのも面白いかも。 【石坂洋次郎の本】 登坂 恵里香「チェスト!」を読んだ。
「負けるな、嘘を言うな、弱いものいじめをするな。」 そんな3つの掟を守り、「卑怯はやめろ」が口癖の小学6年生。曲がったことは嫌いな、あまりの堅物ぶりに、友達からは「化石」と呼ばれている。 そんな主人公の名前は隼人。薩摩 これは鹿児島県錦港湾の沿った町で育つ、まっすぐで、ちょっとおっちょこちょいな少年のものがたり。 釣具店を営み、船を持つ父親がいながら、実は隼人はカナヅチ。 学校の伝統行事の錦港湾横断遠泳も、なんのかんのと理由(というか「うそ」)を付けて不参加のまま卒業の年を迎えたのだ。 今年の遠泳大会は目前。さて、隼人は? 物語には、陰をもった転校生や、隼人がほのかに思いを寄せる少女なども登場。さわやかな読後感が残る一冊。表紙のような青い海原と白い入道雲が目に浮かぶような、すかっとした小説だった。 映画化もされていて、今年4月19日に公開予定。 【登坂恵理香の本】 |