![]() | 約束 石田 衣良 (2007/06) 角川書店 この商品の詳細を見る |
「池袋ウエストゲートパーク」というTVドラマの元になった小説を書いた人。そんなイメージしかなかった。具体的に言うと、若者の生活をスピード感あるタッチで描き、暴力やセックスを語る人。そんな感じ。
でも、違ってた。見事にそのイメージを裏切られた。
帯のコピー「かけがえのないものを失くしても、いつか人生に帰るときがくる−」という一文が示すように、この短編集に収められたのは、大事なものを失い傷ついた人々の物語。いわゆるお涙頂戴には反感を抱くけど、この作品集はそうじゃなかった。
収められたのは、親友を目の前で失った少年を描く「約束」、リストラ寸前で息子にもさげすまれる父親が登場する「青いエグジット」、突然耳が聞こえなくなった少年の伝えるメッセージが染みる「天国のベル」、不登校の少年よ廃品回収の老人の交流を描く「夕日へ続く道」、難病手術を迎える少年のため祖父が命を懸ける「ハートストーン」など。
引きこもりで、事故によって片足を失い荒れている息子にさげすまれ、自身もリストラの憂き目に直面している男のこんな心の声に、心を突き動かされる。
もうこれから自分にいいことはやってこないのだ。そう覚悟を決めて謙太郎は八方ふさがりの人生を受けとめていた。また、そうなってみると耐えることのなかにも、しびれるようなおかしさもあるのだった。盛りをすぎて、くだり坂になった人生を生きるおかしさ。(中略)
謙太郎に希望はなかった。ただどこまで自分が耐えられるのか、その底を見極めたい。人生が自分にどれほど悪意を見せるのか、最後まで見届けたい。マイナスばかりの決意が生きる支えになるなど、若かったころには想像さえできなかったことである。
(p45「青いエグジット」)
なんという苦い認識。でも、かっこいい。きっと、これが、生きる強さということだろう。
また廃品回収の老人が不登校でいつも公園で座っている少年に語る次のような言葉。
「おれは兄ちゃんがどうしてひとりで公園にいるのかは、わからねえ。だけどな、ときには自分を折るのも大事だぞ。毎日すこしずつ負けておく。そうしておくと、最悪の事態はなんとか避けられるもんだ」(p156「夕日へ続く道」)
つっぱらかって、自分の思いを通すことでは、結局何も良くならない。なるほどそうだ。
そして息子が大手術に望んでいるときの母親の心境を描くこんな文章もいい。
どれほどあせっても、研吾に自分たち夫婦がしてやれることは、なにもないのだ。ひとりで生まれ、ひとりで育ち、いつか想像もできない場所と時間にひとりで死んでいくのが人間なのだ。志津子は明るい秋の日ざしを見つめながら、ほとんど肉体的な痛みとともにそう心に刻み込んだ。
(p232「ハートストーン」)
ひとりでいること。でも他者とつながっていること。傷ついた人が人生に帰ってくるときには、ひとりの自分と、自分につながるだれかが必要だということを、伝えてくれる本だった。
【石田衣良の本】
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実はたまにお邪魔していたんですが、初めてコメントさせて頂きます
僕も事後になりましたが、リンク貼らせて頂きました。今後ともよろしくです。
石田衣良は未読なんです。これを機会に読もうかなと思います。
積読本が多いので、辿り着くのはいつのことやら、って感じなんですが
どうぞよろしく
こちらこそ、どうぞよろしく。
積読はこちらも同様です。
いつも頭を悩ましてます。
来週あたり、「エイヤっ」とふるい本から処分するつもりです。
悔しいけれどしょうがない。狭い我が家には限られたスペースしかないもので。。。